日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
特異な形態を呈し,短期間に著明な形態の変化をきたした胃の好酸球性肉芽腫の1例
辻 賢二福田 新一郎布施 好信内藤 英二依岡 省三加藤 隆弘児玉 正瀧野 辰郎
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 25 巻 7 号 p. 1061-1067

詳細
抄録

 症例は32歳の主婦で,心窩部痛および背部痛を訴えて来院した.胃X線検査にて胃前庭部胃角部寄りの前壁に境界鮮明な円形の腫瘤陰影を認めた.内視鏡検査では基部にくびれを有する粘膜下腫瘍様の隆起であったが,その頂部には冠状の灰黄色の小隆起を伴なっており,あたかも陰茎亀頭様のきわめて特異な形態を呈していた.小隆起からの生検により,肉芽組織との診断を得た.約1カ月後の切除胃の肉眼所見では腫瘤の形態は著明に変化し,内視鏡にて認められた小隆起は消失し,頂部には潰瘍形成が認められた.組織学的には腫瘤は線維芽細胞の増生が著明であり,びまん性の好酸球浸潤も認められ,好酸球性肉芽腫と診断した.このような特異な形態を呈した好酸球性肉芽腫はこれまで本邦においては5例の報告があり,術前診断に際しての有力な所見と考えられた.また短期間に著明な形態の変化をきたしたことについては胃粘膜被覆を欠き,胃内腔へ露出した腫瘤が壊死のため,一部脱落したためではないかと考えられる.好酸球性肉芽腫が短期間にこのような著明な変化をきたしたという報告は珍しく,若干の文献的考察を加えて報告する.

著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top