抄録
59歳の女性.昭和55年2月頃より右季肋部痛が出現し,昭和56年12月痛みが増強しなため,当科を受診して入院となった.入院時,黄疸はなく,軽度の貧血と肝腫大を認めた.生化学検査では,LDH高値以外にはとくに所見を認めず,肝シンチおよび腹部CTで肝右葉にかなり大きな腫瘤像を認め,原発性肝癌を疑った.しかし,血管造影では肝の血管腫を思わせる所見も得られた.腹腔鏡検査では,右葉に黄白色腫瘤を取り囲む形で青紫色斑を認めたため,肝細胞癌あるいは肝血管腫を疑って開腹術を施行した.すでに腹腔内には広範囲に転移が認められ,切除不能と判断され,試験開腹に留まった.試験切除による標本では,組織学的に肝血管肉腫と診断された.発症後1年8カ月,確定診断後6カ月にて死亡した.