抄録
急性腸炎様症状で突然発症し,短期間でその臨床像が急速に増悪した全結腸炎型大腸Crohn病の1例を報告した. 症例は22歳男性.生来健康で薬物服用などはなかったが,突然水様性下痢,発熱,下腹部痛が起こり,急性腸炎として加療したが著明な低蛋白血症と体重減少が出現,大腸X線および内視鏡検査で異常を指摘され,当科に紹介された.糞便に虫卵や病原性細菌は認めず,大腸X線および内視鏡検査で直腸は正常,S状結腸から口側全結腸に定型的な縦走潰瘍とcobblestone appearanceがみられた.大腸生検で非乾酪性肉芽腫を認め,胃および小腸に異常はみられず,臨床経過,検査所見を総合して急性発症型の全結腸炎型大腸Crohn病と診断した. Crohn病は慢性疾患として特徴づけられ,発症も一般に緩徐である.本症例のように急激に発症し,直腸を除く全結腸炎型を示した大腸Crohn病は極めて稀で,著者らが検索した限りわが国における報告例は見当らない.