1986 年 28 巻 12 号 p. 3118-3125
食道癌が上皮内癌の状態で発見されることは比較的稀である.症例は60歳男性.4年間にわたり十二指腸潰瘍の薬物療法を受け,毎年4回以上の内視鏡検査を受けていた.4年目の第3回目の内視鏡検査では食道に異常所見はみられず,それから6カ月後の内視鏡検査で,門歯列から38cmのEi領域に,爪甲大の発赤がみられ,Lugol染色法で不染帯として認められた.この部位の生検で扁平上皮癌と診断された.胸部食道全摘,リンパ節郭清が右開胸下に施行された.切除標本では,食道胃接合線より約3cm口側の食道の約半周に,2.5×2.0cm大で,境界不整,粘膜面が顆粒状不整の表在平坦型の病変がみられた.組織学的には食道上皮内癌(扁平上皮癌)であり,リンパ節転移はなかった. 食道癌を上皮内癌の状態で発見するためには,愁訴のない人も含めて,6カ月に1回の内視鏡検査が行われることが望ましい.