日本消化器内視鏡学会雑誌
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Mucosal Prolapse Syndromeの2例
今村 哲理別役 孝井林 淳
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1986 年 28 巻 5 号 p. 1060-1069

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抄録

du Boulay(1983年)はSolitary ulcer of the rectumとRectal mucosal prolapseとの比較から,Solitary ulcer of the rectumもmucosal prolapseによって,惹起されることを強調し,"Mucosal prolapse syndrome"という統一概念・名称を提唱している. 本症候群はしばしば多発潰瘍の型を呈したり,非潰瘍型(隆起型・発赤斑の型など)を呈したりし,診断医・病理医に誤って理解されている面がある.本症候群は一般に若青年者に多く,難治性で慢性に経過し,時に癌と誤られ過大な手術が行われる可能性もある.臨床像と特徴的な病理組織像を把握し,本症候群のスペクトルを認識し,早期に診断することが大切である. 著者らも数年間診断に苦慮した2例を経験した.症例1は8歳,女子.主訴は粘血便で,直腸内視鏡検査で下部直腸に不規則なpolypoid病変がみられ白苔を伴っていた.経肛門的外科切除が行われた.その後2回の再発がみられそれぞれ経肛門的切除が行われた.症例2は11歳,男子.主訴は鮮血便で,直腸内視鏡検査で下部直腸に半球状隆起の集簇と発赤斑を認めた.経肛門的外科切除が行われ,これまでのところ再発はみられていない. 両症例共病理組織学的にMucosal prolapsesyndromeに一致するものと考えられ,臨床経過・病理組織像を中心に報告した.

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