抄録
胃筋原性腫瘍の良・悪性の鑑別を目的として,切除された胃平滑筋腫(以下,筋腫)16例,胃平滑筋肉腫(以下,筋肉腫)8例の臨床的事項および病理学的所見について検討し,その中でEUSを施行した10例(筋腫7例,筋肉腫3例)においてEUS像と病理組織標本を対比検討した.腫瘤の形状,潰瘍の有無でわずかな差をみるが,臨床的事項または肉眼所見から筋腫と筋肉腫を鑑別することは困難であった.病理標本で肉眼的に判別可能な腫瘍内部の壊死巣は筋腫2例(12.5%),筋肉腫6例(75.0%)と筋肉腫で高率に見られ,しかも広範囲であった.また,液化壊死巣は筋肉腫の3例にのみ認められた.一方,EUSにより固有筋層由来の筋原性腫瘍は第4層と連続する境界明瞭な低エコーの腫瘤として描出され,内部エコーの特徴から3型に分類された.病理標本と対比したところ,B typeの高エコー部分は硝子様変性の部分に,C typeの無エコー部分は液化壊死の部分に一致した.以上より,筋腫はA,Btypeに,筋肉腫はA,B,Ctypeに描出されるが,特に無エコー領域を有するCtypeは筋肉腫を強く疑うべき所見であるとの結論を得た.