抄録
症例は70歳,男性.嚥下困難を主訴として来院.上部消化管造影にて食道上部に表面凹凸不整で急峻な立ち上がりを示す隆起性病変がみられた.内視鏡検査では門歯列より20cmの食道後壁に赤かっ色,亜有茎性でカリフラワー様の特異な外観を呈する腫瘤を認め,食道癌が疑われたため食道亜全剔術が施行された.摘出標本は6.0×5.5×2.0cm大であり,組織学的には良く分化した扁平上皮癌で,上皮が乳頭状の増殖を示し,腫瘍細胞の異型性は軽度で,基底膜を保持しながら周囲の結合織を圧排していた.以上の所見を総合しVerrucous Squamous Cell Carcinomaと診断した. 本腫瘍の食道発生例はきわめて稀であり,1986年末までに10例が報告されているにすぎない.本稿では自験例を加えた計11症例について文献的考察を行い,食道のVerrucous Squamous Cell Carcinomaの臨床的ならびに病理組織学的特徴について検討した.