抄録
雑種成犬10頭を用いて,trypsin加自家胆汁膵管内注入により実験的急性膵炎を作成,5時間後まで経時的に内視鏡下に電解式組織血流計を用いて胃体部粘膜血流量を測定した.なお,実験中は大腿動脈圧,心拍出量を持続的にモニターし,血中アミラーゼ,bradykinin,histamine値を測定した. 胃体部粘膜血流:量は,前値57.8±2.5ml/min/100gが5時間後では47.0±10.5ml/min/100gと低下の傾向を示した.しかし,実験中,明らかな胃粘膜ビランや胃出血は認められなかったが,粘膜色調の蒼白化が著しかった.平均大腿動脈圧は,前値113±12mmHgが5時間後の43±9mmHgまで経時的に低下し,cardiac indexでも前値4.2±1.1ml/min.m2が5時間後では2.4±1.5ml/min.m2と低下し,胃粘膜血流量低下の一因と考えられた.血清ガストリン値は実験中有意の変動は示さなかった. 門脈および末梢血bradykininおよびhistamine値は胆汁注入直後一過性に上昇を示し,その後,低下したが,門脈血histamine値は膵炎作成5時間後まで前値に比べ有意に高値を持続した. かかる血管作動性物質の胃粘膜血流量への影響は明らかでは無かった.