1990 年 32 巻 10 号 p. 2379-2385
レーザーによる内視鏡治療後に良悪性の鑑別に苦慮した所見を呈した早期胃癌の1例を報告した.症例は81歳の心不全を合併する男性.病変は幽門前庭部の推定深達度mの分化型のIIcで,非接触型Nd:YAGレーザー照射後,搬襲集中を伴う,発赤したやや粗なしかし整った粘膜模様像を呈する著明な隆起を認めた.癌の再発が否定できず,ポリペクトミー施行す.Hyperplastic polypの像を呈し,隆起型胃潰瘍癩痕と診断した.この成因に関しては,H2-blockerやレーザーの作用が複雑にからみあった結果生じたのではないかと推定された.早期胃癌に対する内視鏡治療,とくにレーザーによる療法の増加およびH2-blockerの使用頻度の増加に伴い,今後この様な症例が増加することが予想されるので,十分念頭に入れなければならない.