抄録
症例は18歳,男性.献血にて,HBs抗原陽性を指摘され,精査目的にて当科入院.腹部外傷の既往はなかった.入院時,HBs抗原陽性,HBe抗原陽性,軽度の一般肝機能検査異常を認めた.腹腔鏡検査にて,肝は軽度の紋理増強を伴う大白色肝であった.左葉中央部に表面に浅い裂溝を伴う分葉異常を認めた.裂溝は鋭利であり,先天的なものと診断した.なお,裏面の裂溝は辺縁にのみに認めた.ICG染色性に裂溝間の左右差はなく,血流には異常がないと思われた.肝生検組織では,慢性非活動性肝炎であった.また,腹腔鏡,肝生検,飢餓試験よりGilbert症候群と診断した.肝の分葉異常は当科腹腔鏡施行789例中,右葉では8例(1%)認められた.左葉では本例のみで,本邦では2例目であり,まれな例と思われたので文献的考察を加えて報告した.