日本消化器内視鏡学会雑誌
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EVL用(O)リングを用いて内視鏡的粘膜切除術を施行した食道表在癌の1症例
井上 好央二村 浩史益子 博上符 正志宮本 兼吾高山 澄夫青木 照明池上 雅博杉坂 宏明
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1998 年 40 巻 4 号 p. 663-669

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抄録
 症例は58歳男性.上部消化管内視鏡検査にて10mm大の表在軽度陥凹型の食道癌と診断された.高度肝機能障害のため,内視鏡的静脈瘤結紮術用0リングを用いて内視鏡的粘膜切除術Endoscopic Mucosal Resection with Ligating device(以下EMR-L)を施行した.深達度がm3であったため,化学療法を施行し,36カ月間,再発は認めていない.EMR-Lにて治癒切除した可能性が高いと考えられた一例を経験したので,EMR-Lの有用性を報告する.I緒言 近年早期食道癌では,画像診断と内視鏡診断の急速な進歩に伴い,術前診断と術後切除標本の深達度およびリンパ節転移との相関が得られるようになってきた.さらに超音波内視鏡にて術前に深達度を把握できることより内視鏡的粘膜切除術Endoscopic mucosal resection(以下EMR)の適応がひろがってきた.特にhigh risk患者においては,EMRは外科手術に比べて侵襲の少ないすぐれた治療方法と考えられる.しかし,早期食道癌のうち深達度m3~sm1のEMRの適応は,リンパ節転移の可能性があることから今日まで確立していない.EMRの手技は今日まで様々な方法が報告されてきた.今回われわれは安全かつ確実な切除法の内視鏡的静脈瘤結紮術(以下EVL)用の結紮器具Ligating device:(0)リングを用いたEMR(以下EMR-L)を応用し,補充療法として化学療法を行い,良好な成績をおさめた早期食道癌症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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