抄録
症例は70歳の男性.健康診断を目的に上部消化管内視鏡検査を施行したところ,土十二指腸角に長さ15mrnほどの自色管状物の付着を認めた.それを生検鉗子で把持し,回収した.白色.管状物の先端には頭部と思われる隆起があり,寄生虫の虫体と考えた。検討の結果,鉤頭虫類のうちBolbosOlna属の雄の未成熟虫体と判明した.病歴からは同寄生虫の感染経路も不明であり,無症状であった.穿孔には至っておらず,ごく最近の感染が疑われた.消化管内における同種の寄生虫の内視鏡的な確認例の報告はなく,貴重な症例と考え文献的考察を加えて報告した.