日本消化器内視鏡学会雑誌
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潰瘍性大腸炎におけるコンピューター支援内視鏡的重症度診断システム
佐々木 賀広羽田 隆吉棟方 昭博
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2004 年 46 巻 10 号 p. 2319-2324

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抄録

 【研究の背景】電子内視鏡で観察される消化管粘膜の赤みの程度はヘモグロビンインデックス(IHB)を測定すれば定量可能である.しかしながら,その測定値は同一被写体でも撮影条件によって変化する.本研究の第一の目的は,IHBの値を正確に測定するためには原画像に加えられたγ補正を除去する処理が不可欠であることを強調することである.第二の目的は,潰瘍性大腸炎患者の内視鏡像を,測定したIHB値のグレースケール画像に変換し,画像特徴量を抽出してMattsの重症度を特徴づけ,これにより潰瘍性大腸炎のコンピューター支援重症度診断システムを構築することである. 【方法】潰瘍性大腸炎患者55人におけるデジタル内視鏡画像130枚(Matts1が30画像,Matts2が70画像,Matts3が20画像,Matts4が10画像)を対象とした.原画像からγ補正を外し(IHBのグレースケール画像に変換した後に),画像全体におけるIHBの平均値,IHBの標準偏差,IHBの尖度,コントラストフユーチャーを計算し,これら4つの特徴量から,ベイズの決定理論に基づいてコンピューター支援重症度診断システムを構築した. 【結果および結論】Matts1とMatts2とを比較するとMatts2でIHBの平均値に有意の増加がみられた.Matts2とMatts3あるいはMatts3とMatts4を比較した場合にはIHBの標準偏差とコントラストフユーチャーに有意の増加がみられた.IHBの尖度は,Matts1あるいはMatts4と比較してMatts3で有意に大であった.この重症度診断システムがMatts1とMatts2,Matts2とMatts3あるいはMatts3とMatts4を鑑別する感度・特異度は,それぞれ84%・96%,94%・70%,100%・85%であった.コンピューター支援重症度診断システムは,潰瘍性大腸炎に対する治療効果の定量判定に資すると考えられた.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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