日本消化器内視鏡学会雑誌
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大腸全摘術後の潰瘍性大腸炎における回腸嚢の内視鏡所見と排便回数の関係
篠崎 大小金井 一隆福島 恒男
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2006 年 48 巻 11 号 p. 2674-2681

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抄録

 【背景と目的】回腸嚢炎は潰瘍性大腸炎(UC)に対する大腸全摘術後の晩期合併症の一つであり,排便回数の増加と相関している.この研究の目的は回腸嚢の内視鏡所見と排便回数の相関を明らかにすることである.【対象と方法】63例,100件における回腸嚢の口側,回腸嚢,残存直腸の内視鏡所見と組織学的所見をretrospectiveに解析した.【結果】28例中4例(14%)で回腸嚢の口側に炎症所見が認められた.回腸嚢には67%で異常所見が認められた.顆粒状変化,易出血性,粘液,発赤,びらんは排便回数と有意に関係していた.'Endoscopic pouch activity index'(EPAI)を全体的な発赤,粘液,易出血性,潰瘍,びらん,顆粒状変化の陽性因子数とすると,EPAIは排便回数と非常に強く相関した(p< 0.0001).内視鏡上で残存直腸に軽度または中等度の炎症が認められた症例は炎症のない症例より有意に排便回数が多かった(それぞれp=0.0294,0.0183).多変量解析ではEPAIと回腸嚢の組織学的炎症度が排便回数と有意に相関する因子であった(それぞれp=0.0004,p=0.0429).時間経過の検討ではEPAIと残存直腸の内視鏡上の炎症度が排便回数と有意に相関した(それぞれp=0.0120,0.0244).【結論】EPAIは回腸嚢の炎症を評価する上で有用と考えられる.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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