日本消化器内視鏡学会雑誌
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超音波内視鏡ガイド下胆管ドレナージ術
藤田 直孝野田 裕小林 剛伊藤 啓洞口 淳高澤 磨中原 一有
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2008 年 50 巻 5 号 p. 1356-1363

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抄録

 内視鏡的胆管ドレナージ術,すなわち内視鏡的胆管ステンティング(endoscopic biliary stenting,EBS)は,良悪性を問わず閉塞性黄疸に対する第一選択の治療法となっている.これは,外科的な内瘻術や経皮経肝的な胆管ドレナージ術(percutaneous transhepatic biliary drainage, PTBD)と比較しより低侵襲性で偶発症も少なく安全に実施できること,生理的な胆汁の流路を確保できることに起因する.しかしながら,EBSは全例に実施可能というわけではない.内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)で選択的胆管挿管が不能な場合,十二指腸狭窄などにより十二指腸乳頭に到達できない場合には,外科的ドレナージ術もしくはPTBDが選択されてきた.近年,超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography, EUSもしくはendosonography,ES)は,単に消化管や隣接臓器の超音波断層像を得たり細径針を用いた吸引細胞診,生検により組織標本を得るのみならず,治療的応用が進んできている.超音波内視鏡ガイド下胆管ドレナージ術(endosonography-guided biliary drainage, ESBD)は,そのような治療的超音波内視鏡の一つで,近年これに関する報告が増加している.本稿では,ESBDの技術的側面と現状について概説する.ESBDではEBSと同様,手技に起因する疼痛もなく,胆汁の生理的な流れを回復することが可能である.したがって,ESBDは近い将来,閉塞性黄疸患者においてEBS困難例のみならずPTBD困難例に対する新しい選択肢として,広く受け入れられることが予想される.また,ESBDが第一選択となる状況も明らかになるであろう.関連処置具の開発によりESBDの適応は拡大され,普及も加速することが期待される.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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