2020 年 17 巻 6 号 p. 514-519
【背景】診断学スチュワードシップ(DS)は,抗菌薬適正使用(AS)や感染管理とともに適正な感染症診療に重要な3本柱の1つであり,とくに血液培養(BC)で耐性菌が検出された場合に抗菌薬の介入などが必要となる。今回,アウトカムを在院死とし,リスク因子を年齢,性別,BCで発育した耐性菌,Sepsis–3の定義に用いられるSOFA(連続的臓器障害評価)スコアの平時との差分(Δ)として検討した。【対象と方法】対象は,2011~2018年15歳以上の入院と外来患者で,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌を除く発育のあるBC例とした。方法は,在院死に対するリスク因子をロジスティック回帰分析した。【結果】BC陽性の延べ総数は926件,実人数は868人であった。年齢は中央値80歳,性別は男性474人,女性394人であった。疾患カテゴリーは,中枢神経3人,呼吸器188人,血流66人,腎尿路270人,肝胆膵125人,腹膜・消化管100人,骨軟部116人であった。主要評価項目である在院死に対する多変量解析で有意は,Δ≧2(オッズ比2.786,95%信頼区間1.856–4.181;P<0.001),MRSAのBC陽性(同3.405,1.646–7.046;P=0.001)および疾患で呼吸器(同2.850,1.915–4.242;P<0.001)であった。【結語】敗血症において抗菌薬開始前に採取するBCなどがDSの第一歩である。その後,とくにMRSAなどの耐性菌を目標に結果を急ぎ,耐性菌に対する抗菌薬に変更し,感染管理によって次の耐性菌感染をさせないことが重要である。