現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
論文
AI等の先進技術に対する企業姿勢と企業価値および企業業績との関係—企業姿勢が無形資産となりえるかの一考察—
小澤 秀幸光定 洋介斎藤 文
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ジャーナル 認証あり

2023 年 46 巻 p. 47-69

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抄録

本稿では「AI等の先進技術」(以下,先進技術)に対する積極性という企業姿勢と,「市場が評価する企業価値」(トービンのQを用いる)や企業業績(ROAを用いる)との関係を分析した.まず有価証券報告書のテキスト分析を行い先進技術に積極的な企業姿勢を定義した.次に先進技術に積極的な企業と同業種内で同規模のそうでない企業とでマッチングを行い,企業価値や企業業績に与える影響を多変量解析により検証した.

分析の結果,企業価値への影響では,企業価値に対しては直ちに有意にプラスの効果があった.この結果は先進技術に積極的な企業姿勢をもつ企業群の将来キャッシュフロー予測値を市場が上昇させたと解釈することもできる.また,企業業績への影響では,2期後の企業業績に対して有意にプラスの効果があり,ROAが改善した.

これらの結果から,先進技術に積極的な企業姿勢が,企業文化などと同様に無形資産と見做すことができるという可能性が示唆された.

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© 2023 日本ファイナンス学会/MPTフォーラム
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