2013 年 36 巻 2 号 p. 124-126
要 旨
患者-医療者コミュニケーションを阻害するものとして, 情報の非対称性, 専門用語の使用, 権威こう配などが挙げられ, いまだ両者の間にはパースペクティブの大きな違いが存在する. そうした「すれ違い」を解決する一つの試みが「カフェ型」ヘルスコミュニケーションであり, 病院という制度的空間の外で医療専門職と市民・患者がより対等な関係で自由な対話を行う試みを筆者は2010年より行っている. この対話の場の特徴として「越境的な出会い」「フラットな関係性」「自由な空間」という概念が挙げられ, こうした場において医療専門職と市民・患者のお互いのコンテキストへの理解が進む可能性がある. そうした対話の場におけるファシリテーターは, 立場の非対称性を緩和するための場作りの工夫を行い, また対話の最中においては「行為の中の省察 (reflection in action) 」を常に行いながら, うまく議論の舵取り役となっている.