2008 年 134 巻 p. 23-55
北米北西海岸地域で話されるハイダ語は,自動詞節の主語として現われる人称代名詞が他動詞節の主語と同じ格の場合と目的語と同じ格の場合の二通りがある(但し,1人称単数と複数,2人称単数に限られる)。従って,ハイダ語は,「分裂自動詞性」(Merlan 1985)を有するといえ,活格型言語の典型的な例の1つと見做され得る。
分裂自動詞性を有する様々な言語において,それを決定付けるのは動詞の意味特徴であるが,どのような意味特徴が関与するかは言語によって異なる。
本稿では,「動作性」と「制御性」がハイダ語における分裂自動性に関与すると捉える。これらの意味特徴と更に人称代名詞の人称や格によって,ハイダ語の自動詞は4つに分類することができるが,意味特徴が主たる分類基準であるために,自動詞の分類は,厳密になされるものではない。更に,このことは,活格型言語を一般的に特徴付けることの難しさを示すものと考えられる。