言語研究
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論文
  • ――慶南方言・済州方言の名詞述語疑問文と動詞述語疑問文を手掛かりに――
    鄭 聖汝
    2020 年 157 巻 p. 1-36
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/10
    ジャーナル フリー

    韓国語の名詞述語疑問文は,元来コピュラなしの[名詞句+ka/ko]の構造を基本にしている。本論では,動詞述語疑問文の場合も,中世語から現代語に至るまで,疑問形式-ka/koの前にくる要素は名詞句相当であると主張する。重要なのは,動詞基盤の体言化辞-m, -n, -lと丁寧体疑問に用いられる体言基盤の体言化辞-sの機能である。議論を進める上で,Shibatani(2009, 2017, 2018, 2019)の新しい体言化理論がきわめて有益であり,中世語はもちろん,現代標準語,慶南方言,済州方言に見られる多様な疑問形の分布を包括的かつ統一的に説明できる。

  • 西垣内 泰介
    2020 年 157 巻 p. 37-69
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/10
    ジャーナル フリー

    「潜伏疑問」の構造と統語的派生を示し,それに関与する統語的・意味的現象を明らかにする。本論文で主張するのは,「潜伏疑問」が「指定文」と平行した特性を持っているということである。「指定文」と「潜伏疑問」の統語的派生の中核となる「関数名詞句」と呼ぶ名詞句の構造を示し,「潜伏疑問」を「関数名詞句」から派生する統語的プロセスとその諸相について考察し,「潜伏疑問」の主要部,その統語的範疇について検討する。また,「潜伏疑問」が「疑問節の島」(wh-island)の制約の効果を示すことを指摘する。さらに,ある種の「指定文」に見られる「構造的連結性」(connectivity)の問題を考察し,その「構造的連結性」が「指定文」が「潜伏疑問」とそれに対する答えからなる構造を持つと考えることで解明されることを示す。「潜伏疑問」の意味的特性について考察し,それらが本論文で展開する統語的分析から帰結することを主張する。

  • 新永 悠人
    2020 年 157 巻 p. 71-112
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/10
    ジャーナル フリー

    本稿では湯湾方言(琉球諸語の1つである奄美語に属する)の複数形が持つ諸機能に注目し,それを世界の諸言語の複数形が持つ「特殊な機能」(Corbett 2000: 234)と比較・考察した。湯湾方言の複数標識は,簡単に言えば,日本語標準語の「たち」だけではなく,「など」に相当する機能も持っている。このような現象を通言語的な視点から整理するために,本稿では「意味地図」(semantic map)という方法論を用いた。その際,単数,双数,複数などのような「数の区分の意味」(number values)と,累加,連合,などの「数の区分以外の意味」(non-number values)を分けて捉えることによって,諸言語の複数形が持つ「特殊な機能」が意味地図上で比較考察できるようにした。その結果,従来の研究では区別されていなかった「集合的例示」と「選言的例示」の区別,および複数形が実質的に1人の対象を指す用法のうち,いわゆる「尊敬複数」(polite plural)とは異なる「否定的・単独的例示」の通言語的な価値を明らかにした。

  • 宮腰 幸一
    2020 年 157 巻 p. 113-147
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/10
    ジャーナル フリー

    本稿は日本語受動の新たな類型論を提案・実証する。主な提案は次の7つである。[I]日本語受動は[1]受影主受動と[2]経験主受動に大別され,それぞれさらに下位分類される。[II]ラレルは2(+1)項助動詞であり,意味と統語の両レベルで[1]よりも[2]の方が階層的に上位の構造を持ち,[2]の中でもあるタイプ([A]直接・[B]所有1)よりも別のタイプ([C]所有2・[D]間接)の方がより複雑な構造を持っている。[III]すべてのタイプにおいて意味レベルの束縛が重要な役割を果たす。[IV]受動の本質的特性である〈受影性〉は6つの認可条件と3つの階層で複合的に規定される。[V]日本語受動の典型は[2A]タイプであり,それは主体的把握・内界表出文である。[VI]それがプロトタイプであることは三重受影性階層から定理として導き出される。[VII]非典型的なタイプも,受影主や複合事象/複雑述語文の一般的な派生度測定基準/方法の導入により,原理的に説明される。

フォーラム
  • ――赤ちゃん用のオムツの名付けにおける唇音――
    熊谷 学而, 川原 繁人
    2020 年 157 巻 p. 149-161
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/10
    ジャーナル フリー

    現在,日本で市販されている赤ちゃん用オムツには,唇音 [p, m] を含む名前が多い(例:「メリーズ(/meriizu/)」,「ムーニー(/muunii/)」,「パンパース(/panpaasu/)」,「マミーポコ(/mamiipoko/)」)。この観察は,唇音が喃語に多く現れる子音であるという事実と関連がある可能性もあり興味深い。本研究では,日本の赤ちゃん用オムツの名付けを題材として,音象徴の抽象性と生産性について,2つの実験を通して探求する。実験1では,無意味語を用いた強制選択実験により,日本語における5つの唇音 [p, b, m, ɸ, w] が赤ちゃん用オムツの名前として選ばれやすいことを示す。実験2では,赤ちゃん用オムツと大人用化粧品の自由名付け課題を行った結果,5つの唇音が大人用化粧品の名前よりも赤ちゃん用オムツの名前に多く現れることを示す。これらの結果から,当該の音象徴的つながりが [p] や [m] のような分節音単位ではなく,より抽象的な唇性 [labial] というレベルで成り立っていること,そして,生産性を持っていることが示唆される。このような抽象性や生産性は,他の音韻現象でも観察されることであり,音象徴パタンが他の音韻パタンと共通性を持っていると結論づけられる。

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