指定文およびカキ料理構文を,内項と外項をとる「中核名詞句」から派生しようとする西垣内(2016)の分析を批判的に検討する。西垣内の分析には,(i)外項を要求しない指定文をこの枠組みでは説明できない,(ii)指定文に課せられた条件「過不足なく指定する」は妥当ではない,(iii)西垣内の提案する「談話演算子」なる概念装置は誤った予測をする,(iv)中核名詞句に基づく逆行束縛現象の分析は一般性を欠く,という問題があることを指摘する。そして,指定文およびカキ料理構文の分析には西山(2003)の言う「変項名詞句」なる概念が重要な役割を果たすこと,カキ料理構文の十全な分析には,飽和性を語から句にまで拡張する必要があることなどを論じる。