言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
特集 焦点および焦点関連の現象をめぐって
琉球諸語における情報構造,焦点および焦点階層について
下地 理則
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2018 年 154 巻 p. 85-121

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抄録

本稿の目的は,琉球諸語における焦点助詞(du, ga)による焦点標示の方言差(バリエーション)を記述するとともに,そのバリエーションに関して,可能なパターンを記述でき,不可能なパターンを予測できるモデルを提示することである。扱った方言は15方言であり,北琉球語から喜界島方言(佐手久,小野津),奄美大島方言(瀬戸内,湯湾),徳之島方言(伊仙),沖永良部島方言(国頭),沖縄本島方言(与那原)の7方言,南琉球語から宮古方言(伊良部島長浜,宮古島保良,多良間島),八重山方言(石垣島真栄里,黒島,鳩間島,西表島船浮),与那国方言の8方言である。本稿では,焦点タイプ(WH焦点vs. WH応答焦点vs.対比焦点)と焦点ドメイン(項焦点vs.述語焦点)の2つの変数で方言差を記述し,琉球諸語の焦点標示に関して,通方言的に以下の2つの階層を提案する。(1)焦点タイプの階層:対比 > WH応答 > WH(2)焦点ドメインの階層:項 > 述語琉球諸語の焦点標示に関して,この焦点階層(Focus-Marking Hierarchies)を用いることで,「階層のある地点で焦点標示が可能なら,その左側でも焦点標示可能である」と一般化できることを論じる。

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© 日本言語学会, 著者
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