言語研究
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ロシア語におけるいくつかの統語範疇からの要素の外置
匹田 剛
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1992 年 1992 巻 102 号 p. 17-44

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抄録

ロシア語は,語順が「自由」な言語であると言われており,語順の「かきまぜ」によって,従属節,名詞句,前置詞句からの要素の外置をもしばしば行う。本稿の目的はそれらの統語範躊からの要素の外置を記述することである。第1節で扱った従属節からの取り出しは,移動を妨げるbounding nodeとしての接点SおよびS'を削除することにより可能となるが,その削除が行われるための条件はComrie(1973)が削除規則S-PRUNINGを設定し主張したようなVP以外のovertな範疇の有無ではなく,むしろ時制の有無である。従って彼の設定した規則には改定が必要であると考えられる。また,第2節で扱った名詞句および前置詞句からの要素の外置に関しては,ロシア語においてこれらの範疇は一般に考えられているようにbounding nodeではなく,外置される要素における主節の文要素としての格表示の有無が外置の可能性を決定づけていると考えられる。

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