言語研究
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日本語二重目的語構文の認知解析
小泉 政利玉岡 賀津雄
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2004 年 2004 巻 125 号 p. 173-190

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抄録

本論文では,述語の項構造と文の統語構造との対応関係の研究の一環として行った日本語二重目的語構文の語順に関する実験結果を報告した.日本語の二重目的語文の基本語順に関して下記の3種類の仮説が提案されており,論争になっている,仮説1:「がにを」が基本語順である.仮説2:「がにを」も「がをに」も共に基本語順である.仮説3:動詞によって「がにを」が基本語順のもの(見せるタイプ)と「がをに」が基本語順のもの(渡すタイプ)とがある.これらの仮説の妥当性を検証するために,文正誤判断課題を用いて,文の読み時間(反応時間)を測定する実験を行った.その結果,見せるタイプの動詞を使った文も渡すタイプの動詞を使った文も共に,「がにを」語順の文のほうが「がをに」語順の文よりも反応時間が有意に短かった.この結果は,二重目的語文は動詞のタイプに関わらず「がにを」が基本語順であることを示唆しており,仮説1が支持された.

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