源流
Print ISSN : 1345-3610
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性行動を司る遺伝子をさぐる
山元 大輔
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1999 年 1999 巻 1 号 p. 36-42

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抄録
動物の行動を律する脳神経細胞(ニューロン)の働き方を指南する遺伝子がどのような情報をそれぞれのニューロンに与えるのかを解明するために、突然変異を誘発したキイロショウジョウバエの性行動を指標として遺伝学的解析を行った。その結果、性行動に異常が発現した変異体を分離することに成功したが、その中で同性愛変異体satoriは雄の不妊変異として報告されていた遺伝子座fruitlessに起こった変異であることが判明した(fruitles-ssatoriと呼称)。本変異体には性指向性の他にもう一つの異常、即ち、雄成虫にだけ存在する雄特異的筋肉(ローレンス筋)の欠損が認められた。ローレンス筋形成の成否は筋細胞そのものの性に依存せず、それを支配する運動ニューロンの性によって決まると考えられる。性指向性を決めているのは脳の神経網であるので、fruitless遺伝子が神経細胞の性決定因子であるとすれば、性行動の異常と筋形成の異常とを一元的に理解可能である。fruitles-ssatori 変異体への正常型fruitless遺伝子の導入実験結果から、私達がクローニングしたこの遺伝子こそ行動や筋形成異常に対応する遺伝子であると断定した。
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