有機分子から成る固体の中を走る電子の運動エネルギーと電子間に働くクーロン反発エネルギーは拮抗している。電子は決して自由ではない。ひしめき合っている。電子が飛び回る舞台である分子の間隔を変えると、牽制し合う電子の集団は、一斉に止まって絶縁体になったり、一斉に動き出して超伝導にもなる。低温では、これら2つの極限の世界は隣り合わせになっている。これは、自由な電子がただ集まっただけでは決して起こらない。電子同士が激しくひしめき合ってこそ起こる"集団"としての特性である。電子集団が見る2つの世界を、3つの方法で操ることに成功した。