抄録
北海道北部において、異なる深さの根を持つ二種(エゾマツ、ミズナラ)の樹木年輪セルロースのd18Oと気候因子の経年変動との関係を調査した。比較的根が浅いエゾマツ(Picea jezoensis)において、d18Oの経年変化は、7-8月の降水量と負の相関がみられた。エゾマツの樹木年輪セルロースのd18Oは、降水量の指標として使用可能なことをを示した。他方、より根の深いミズナラ(Quercus crispula)のd18Oの経年変化は、夏の降水にほとんど関係なく、主に7,8月の平均相対湿度と負の相関を示した。ミズナラの樹木年輪セルロースのd18Oは、この地域において夏の相対湿度の指標として最適であることを示した。