本研究では,堆積物中のイソプレノイドキノンという化合物に着目する。キノンは微生物の呼吸または光合成系の必須電子伝達物質であり,真核生物からアーキア,バクテリアにまたがって広く分布し,かつ構造が分類群によって異なることから,キノン組成によって広い分類群の細菌群集解析が可能となる。この化合物は現在の海洋などの微生物群集解析に応用されているが,演者は新第三紀(約1000~400 万年前)に古日本海の沖合域と沿岸域で堆積した泥岩試料からキノンの派生物を検出し,キノンは地質試料においても適用できることを提示した。本講演では,さらに白亜紀や新第三紀の堆積物およびそれから分離されたケロジェン試料からのデータを加え,キノン分析,とくに結合態キノン分析の適用性,有用性について述べる。