抄録
本研究は現世の淡水成ストロマトライトについて研究を行った.微小電極を用いてストロマトライト表面を測定したところ,微生物が光合成によって方解石沈殿を誘導,呼吸によって沈殿を抑制,全体として沈殿を制御していることが明らかになった.一方,微生物を取り除いた石灰岩プレート上で,同様の条件下において測定を行ったところ,方解石に対して過飽和にもかかわらず方解石の自発沈殿は検出できなかった.このことは光合成が炭酸塩堆積物形成に非常に重要な役割を持っていることを示している.これらの結果から,先カンブリア紀の海は光合成誘導の炭酸塩沈殿が可能であったことが示唆される.そのような海水は,中性以上のpHと比較的高い溶存無機炭素濃度をもっていなければならないことがシミュレーションの結果から明らかになった.