抄録
湖沼や海洋の植物プランクトンによって生産された有機物が、水底に堆積する前に、水柱でバクテリア分解を受ける過程は、堆積物の量や組成に影響を与える。植物プランクトンを主に構成するのは炭水化物、タンパク質、及び脂質であり、それらの分解性が異なる場合、植物プランクトンに含まれるそれらの有機物の組成は、堆積物として残存する有機物量及び組成に大きく影響を与える。そこで本研究は植物プランクトンの分解実験を行い、それらの有機物の分解性を明らかにした。分解初期においては、炭水化物の分解速度が最も大きかった。これは主にグルコースの減少によるものであったことから、この非常に易分解な糖の多くはグルコースを構成単位とする貯蔵性グルカンであると考えられる。従って、植物プランクトンが生産した有機物にこのような貯蔵性物質が多ければ、堆積物として保存される有機物の割合は小さくなると考えられる。