抄録
海洋表層では、植物プランクトンの光合成や有機物の分解などの生物活動により溶存酸素濃度(DO)が増減するが、その濃度や飽和度は、物理過程によっても変化するため、DOから生物生産を見積もることは難しかった。
そこで、本研究は2007年5月のA-line航海にて、N2、Arによって物理過程を補正し、DOの海洋混合層の積算値と大気-海洋間気体交換過程から正味の酸素生産(NOP)を見積もった。
その結果、NOPは沿岸で最も高く(110 mmol/m3/day)、外洋の黒潮域で低い(22 mmol/m3/day)傾向を示し、クロロフィルaとの相関が高かった(R2 = 0.81)。
本研究手法は、NOPを、正確、簡便かつ高空間分解能で見積もることができ、さらに、中規模渦から海盆スケールまで幅広く用いることが可能である。