日本地球化学会年会要旨集
2008年度日本地球化学会第55回年会講演要旨集
セッションID: 3E08 13-03
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同位体で見る地球表層環境変動
二酸化硫黄の光解離と太古代原生代境界の硫黄同位体異常
*上野 雄一郎ダニエラチェ セバスチャン吉田 尚弘ジョンソン マシュー
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抄録
地球史を通した大気組成の変化は依然定量的に見積もられていないが、太古代堆積岩に硫黄の非質量依存同位体分別が発見された事で大気酸素分圧は23から20億年前を境に急上昇したと考えられるようになった(Farquhar et al., 2000; Holland, 2006)。この同位体異常の原因は正確には不明であるが、紫外線によるSO2の光化学反応の際に非質量依存性同位体分別が引き起こされることは実験的に確かめられている(Farquhar et al., 2001)。PavlovとKasting (2001)による大気モデル計算によれば、気体硫黄分子の光解離が10-5PAL以下の貧酸素大気中で生じると硫酸エアロゾルだけでなくより還元的な元素硫黄が生成するため、同位体異常は化学形態の異なる二種のエアロゾルによって大気から地表まで運ばれうる一方、より高酸素分圧下では火山活動等により大気に流入した硫黄は最終的にほぼ全て硫酸エアロゾルとなるため、光解離による同位体分別効果は相殺され地表に同位体異常が保存される事は無いと説明されている。こうした研究をさらに発展させ、大気組成を制約してゆく試みが注目されているが、地質記録から推定される過去のエアロゾルの四種安定同位体組成と実験およびモデル計算から算出されたものとの間には依然大きな隔たりがある(Ohmoto et al., 2006; Bao et al., 2007; Ueno et al., in review)。不一致の最も大きな原因の一つは光解離による同位体効果が正確に見積もられていない事にある(Farquhar et al., 2007)。そこで我々は分光学的な実験によりSO2同位体分子種それぞれの紫外吸収スペクトルを実測し、それらの吸収断面積を求めた(Danielache et al., in press)。さらにこの同位体分子種ごとの吸収スペクトルを用い、光源のスペクトルを仮定することで光解離時の同位体効果を計算により求めた。この結果、太陽スペクトルによるSO2光解離は大きな同位体異常を作りうる事が明らかになった。またその同位体分別係数は大気中のO2およびO3濃度のみならずCO2やSO2それ自身の分圧によっても敏感に変化する事が示唆された。これらの結果と地質記録を比較するとSO2光解離時の同位体効果は原生代最初期の同位体異常(Kaufman et al., 2007)を説明できるものの、それ以前(太古代)の地質データとは一致しない。このことは太古代/原生代境界(約25億年前)を挟んで大気組成が変化したことを示唆している。またその変化は酸素分圧上昇ではなく、それ以外の要因、例えばCO2分圧の減少等に由来する可能性がある。
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© 2008 日本地球化学会
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