抄録
メタン生成能を持つ微生物を、メタン生成菌という。主要な微生物メタン生成代謝として、嫌気的条件下で無機物である二酸化炭素と水素ガスを用いてメタンを生成する水素酸化炭酸還元型メタン生成代謝がある。これまで、水素酸化炭酸還元型メタン生成代謝で生成するメタンの4つの水素原子すべてが、微生物が生育する環境の水に由来するという説が提案され、現在まで受入れられている。しかし本研究では、水だけでなく、水素ガスもメタンの水素安定同位体比に影響を与えていると考えられた。メタン生成菌の代謝過程における水素原子の取り込み機構や、環境中で微生物が作るメタンの水素安定同位体比のとりうる範囲を議論することができる。