抄録
温帯域の造礁性サンゴは地球温暖化に伴う海水温上昇や大気二酸化炭素濃度上昇による海洋酸性化の影響を敏感に受けている生物であると注目されている。しかし、温帯域での造礁性サンゴ骨格を用いた古環境復元の報告例は少ない。なかでも、本研究地域の和歌山県串本は温帯に属し、太平洋側における大型造礁性サンゴの生息の北限であると考えられている。このように過酷な海洋環境に生息している大型の造礁性サンゴ(以下サンゴ)の骨格成長パターンや経年変化を明らかにすることにより、熱帯・亜熱帯のサンゴと同様に古環境指標として使用できるかの検討が求められる。 本研究では和歌山県串本に生息しているサンゴ骨格の現生部位と1800年代後半の小氷期末の部位の酸素・炭素安定同位体比と海洋環境データの比較により、北限域に生息するサンゴを用いた古環境指標の確立を目指した。