抄録
北海道上ノ国町において硫安添加を実施し、生息する海藻類のTNおよびδ15Nから添加の影響を把握することを目的に調査を行った。DIN濃度は、添加後に添加区周辺でNH4-N濃度が増加した。ウニ類の除去による海藻類繁茂試験では、添加区を中心に海藻類が繁茂したが、コンブは繁茂しなかった。コンブ幼体の生長試験では、添加区のコンブは添加区以外のそれよりも顕著に大型化した。これらの海藻類のTNおよびδ15Nを添加前後で比較すると、添加区の海藻類のTN は添加後に増加し、添加区以外に分布する海藻類より高い値を示した。δ15Nは、添加後に添加区の海藻類で大きく変化し、添加硫安に近いかそれよりも低い値を示した。以上から、硫安添加により添加区のDINの主体がNH4-Nに変化し、添加区の海藻類が同位体分別を起こしながら高濃度のNH4-N を取り込み生長していることが示唆された。