抄録
アポロ計画により持ち帰られた月面試料の衝撃年代は、これまでに様々な同位体系を用いて求められており、その年代値は40-38億年前に集中している。この年代の集中は「後期重爆撃」として提案されており、月面や小惑星上で短期間に多重衝撃現象が起こったと考えられている。本研究では、アポロ16号が採取した3つのレゴリス角礫岩に含まれる、大きさ1-2cmの12個の衝撃溶融岩片を用いて岩石学的・年代学的な研究を進め、その特徴の把握を目指す。それぞれの衝撃溶融岩片の岩石学的観察、鉱物組成、全岩組成およびAr-Ar年代測定の結果をまとめると、少なくとも6回の異なる衝撃現象の記録が含まれていることが明らかとなった。