抄録
本研究では、エアロゾルの生成プロセスや雲凝結核特性、酸性度や大気の植生への影響を考える上で重要な有機態窒素の水溶性特性に着目した。森林大気エアロゾル中の水溶性有機態窒素(WSON)の起源を明らかにすることを目的とし、森林で2年半にわたり採取したエアロゾル試料の分析を行った。WSON 濃度及びWSON/水溶性全窒素の質量比は初夏に最大となる明瞭な季節変化を示し、質量の大半は微小粒子(Dp<1.9μm)に存在することが明らかになった。植生起源トレーサーの有機化合物との相関から、森林植生由来の炭化水素の酸化による二次生成が、夏季におけるWSONの主要なソースであることが示唆された。さらにエアロゾル酸性度の上昇に伴うWSON 濃度の増大から、初夏において、エアロゾルの酸性度が森林植生を起源とする炭化水素の酸化によるWSON生成に寄与している可能性が示唆された。