抄録
沖縄トラフにおける海底熱水中のSr同位体比は、海水よりも高い与那国及び南奄西と、低い伊平屋北及び鳩間海丘の二つに大別された。前者は、Sr濃度も海水よりも著しく高く、間隙水の影響を強く受けていることが示唆された。一方、後者は、Sr濃度は海水よりもわずかに高いだけで、間隙水の影響はさほど大きくないことが示唆された。このことは、メタンの炭素同位体比から導かれたMMRモデルの間隙水の影響の大きさから比較すると、真逆の条件を示している。このことは、1000 mよりも深い場所に分布している間隙水中に含まれる熱分解性のメタンと豊富なSrの寄与率の違いに起因している可能性を提唱する。第四与那国海丘及び南奄西海丘には、そういった“深部間隙水”が供給されており、一方微生物起源のメタンを含みSrが海水よりもわずかに多い“浅部間隙水”が供給されているのが伊平屋北及び鳩間海丘であることを示しているというのではないか。