抄録
フミン酸は生体分子の重縮合体であることから、分子構造は堆積場の有機物供給履歴や生物生産の程度を反映していると考えられ、環境評価指標として応用できる可能性がある。河口域堆積物フミン酸の分子構造を分析し、地域分布や環境とのかかわりを明らかにするため、有明海湾奥河口域と筑後川下流域および曽根干潟において調査を行った。分析にはUV/VisとEA/IRMSを用いた。筑後川では川の流れに従い、フミン酸分子構造にかかわる分析値H/CとC/Nが芳香族的から脂肪族的に変化しており、起源物質が陸域由来から海域由来に変化していく様子がはっきり見えた。六角川河口と筑後川分流の早津江川河口ではフミン酸分析値の類似性により物質供給状態の類似性が示唆された。有明海内ではフミン酸の分子構造は物質輸送を反映していた。一方で曽根干潟のA2/A4は有明海と異なる傾向を示しており、これは両地域の環境の違いを示すものかもしれない。