抄録
放射性セシウムを含んだ除染土壌の処理や処分には土壌からのセシウムの脱離速度を知ることが不可欠である。セシウムは、土壌中のイライトなどの粘土鉱物に取り込まれ、固定化されることが知られている。従来行われてきた抽出・脱離実験は、一度脱離したセシウムが土壌に再吸着するため、脱離率や脱離速度が過小評価されていると考えられる。そこで本研究では、吸着剤を用い液相中のセシウム濃度を低く抑えることで土壌への再吸着を抑制した条件で、事故から約40日後に福島県内で採取された土壌試料を用いて20週間という長期間の脱離実験を行った。それにより、土壌からのセシウムの脱離速度定数を求めるとともに、競合イオンが脱離に与える影響や、安定セシウムと放射性セシウムの脱離挙動の違いを評価した。