抄録
海洋や湖沼といった水圏環境下で起きる微生物によるメタン酸化は、海底・湖底から大気へのメタン放出過程を理解する上できわめて重要である。こうしたメタンの酸化過程の解析には、濃度だけではなく炭素安定同位体比(d13C)が酸化分解と希釈の区別などに効果的に用いられてきた。しかし、d13C値を用いても、生成・分解・希釈などの3つ以上の素過程が同時に進行する場合は解析が困難であった。本研究ではメタンのd13C値に加えて、水素安定同位体比(dD)を同時に分析して指標として加えることで、起源推定や反応解析の精度を向上させたメタンの挙動解析を行った。 具体的には光によるメタン酸化の抑制が報告されている琵琶湖において、各深度において採取した湖水試料を制御された光環境下で一定時間培養し、その間のメタン濃度変化、炭素および水素の安定同位体比変化を分析して指標として用いることで、天然環境下の湖水中で進行するメタン酸化過程や光による抑制過程の詳細を解析した。