抄録
塩素同位体比の地球化学研究が近年増えてきた。同位体比分析にはCs2Cl+分子イオンを使う方法(表面電離型質量分析TIMS)とCH3Cl+分子イオンを使う方法(気体質量分析)の二つがあるが、これらの方法に基づく報告値には、著しい不一致がある場合がある。そこでTIMS測定における塩素同位体の分別効果、およびその効果を抑える改良測定法を研究した。改良により塩素同位体比の測定値は定常値を与えるようになった。標準試料の塩素同位体比を繰り返し測定したところ、値に再現性があり、信頼のおける値が得られた。地質学的応用としてIODP317の大陸棚掘削試料(ニュージーランド南島沖)を測定した。塩素同位体比の年代変化は、ユースタシー曲線の海進・海退周期に対応した。