抄録
海水のSr安定同位体組成は、気候変動に伴う陸域風化の質的量的変化や炭酸塩生成率の変化などによる、海洋のSr収支バランスの変化に対応して変動する新しい環境指標として注目されつつある。海洋のSr収支バランスをモデル化するためには、供給源の同位体組成分布を求める必要があるが、岩石の風化に伴うSr同位体分別挙動や主要な河川水や陸域そのもののδ88Sr値分布に関するデータの蓄積は十分でない。 本研究では、河川水へのSr供給源である岩石のうち火成岩にフォーカスし、Sr安定同位体組成分布の様相を詳細に明らかにする事を目的として、様々な種類の火成岩類に対してSr安定同位体組成の分析を行った。本研究では65試料の火成岩の分析を行い、1.4‰にわたる有為な変動が検出された。同位体組成の変動はfelsicな岩石で大きくmafic岩では小さい。本発表ではSr安定同位体分別を生じた素過程に付いても考察を行う。