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鉄マンガン酸化物は深海底に広く分布し、海水に溶存する金属元素を多く取り込むことが知られている。海水に含まれる銅などの金属元素の濃度及び同位体組成は鉄マンガン酸化物への吸着反応により変動するため、その取り込みの際に起きる同位体分別が新たな環境指標として注目されている。δ-MnO2, ferrihydrite吸着時のCu同位体分別Δ65/63Cusoln-solidはそれぞれ0.5 ± 0.3‰, 0.25 ± 0.1‰であった。本実験結果によると、天然の鉄マンガン酸化物と海水間の同位体比の差はマンガン酸化物―遊離Cu2+の分別の影響が支配的であり、有機錯体Cu―遊離Cu2+間の同位体分別の影響は小さいか無視できると推測される。