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太古代におけるイオウと炭素の元素循環は現在と全く異なり、イオウと炭素循環の連携はなく、硫化鉱物と有機炭素の酸化反応は重要でなく、海洋の硫酸塩濃度は現在の200分以下で、堆積岩中の硫化鉱物と硫酸塩鉱物は火山性のSO2ガスの紫外線による分解により生成されたSとSO4から作られた、と一般的に考えられてきた。しかし、このモデルは地質学的、地球化学的な多くの現象と矛盾する。我々は最近、 34.6億年前に深海熱水活動によって、非生物的に作られたと思われる有機物を発見した。この種の有機物は、大気CO2とO2濃度が高く、海底熱水活動が活発であった太古代には多量に生成されたと考えられる。 太古代堆積岩のイオウ同位体の特徴(MIF-Sなど)は、海底火山活動が活発な環境で、硫酸塩に富む海水と非生物起源の有機物とを使った生物的硫酸還元反応と 熱化学的硫酸還元反応によって説明できる。