p. 309-
超塩基性岩の蛇紋岩作用を伴う熱水系は、前生物的な化学進化や初期代謝にとって欠かせない水素に富んだ流体を発生させることから初期生態系において重要な環境の一つであると考えられている。 先行研究にから初期地球と現在の熱水環境ではCO2やpH等が多く異ななることを示唆しており、当時のCO2に富んだ流体とコマチアイトの反応から発生する水素の定量は重要な課題である。 本研究では、コマチアイトとCO2に富む弱酸性流体の反応実験を100、250、300、350℃の温度で行った。 流体中の水素濃度は高温ほど高く350℃で2.9mmol/kg、250℃以下では0.024mmol/kg以下と極めて低濃度の水素濃度を示した。実験の固体生成物としては、各温度で異なる種類の炭酸塩鉱物が晶出しており、その鉄の含有量は低温ほど多いことが分かった。上記観察事実から、炭酸塩鉱物への鉄の取り込みによる水素発生の抑制は低温ほど顕著である事が明らかとなり、初期生態系にとって高温熱水環境が好ましいことを示唆する。