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豊富温泉は北海道の北端に位置する温泉で,油・ガス田地帯に胚胎した化石海水とされる.本研究では豊富温泉の主要化学成分と有機成分の地球化学的特徴と起源生物を明らかにした.溶存物質濃度は海水の約1/3であるが,化学組成はかなり異なる. 温泉水には原油成分が含まれるが,炭化水素には典型的な一連のn-アルカンが見られずかなり生物分解を受けている可能性がある.脂肪酸は短鎖n-アルカノイック酸(<C19)が主要な成分で少量の長鎖n-アルカノイック酸(>C20)および分岐脂肪酸が含まれていた.ステロールは少量のコレステロールのみが検出された.一連の熱変成を受けエピ化したトリテルパンとステランが存在し,原油成分の特徴を示していた.ステランはC27とC29が多く含まれていた.これらの特徴から有機成分は藻類成分が卓越し,少量の維管束植物とバクテリアの寄与がある.