断層の活動性や非活断層の再活動性を評価するうえで、断層面での流体と岩石との相互作用を理解することは重要である。Ishikawa et al. (2008)では、1999年台湾集集(チチ)地震で活動したチェルンプ断層帯に係る研究おいて、高温流体中で移動しやすい元素に着眼し、堆積物を用いた水熱実験から得られている流体岩石間の元素の分配挙動と断層岩の微量元素・同位体組成との比較に基づき、高温流体と岩石との相互作用の痕跡を明らかにした。本研究では、研究例の限られる国内の花崗岩中の活断層を対象とし、同様のアプローチを用いて、断層運動における流体岩石相互作用を評価することを試みた。六甲花崗岩中に分布する五助橋断層を対象とし、化学組成分析・Sr同位体分析を行った。その結果、分析した断層ガウジでは、チェルンプ断層のような350°Cの高温流体による熱水変質や変成作用でみられる傾向とは異なり、過去の断層運動時に高温の流体との相互作用はなかったことが示唆された。今後は、より詳細な化学組成分析から、断層運動における化学組成の変化を解明し、五助橋断層の断層ガウジにおける流体岩石相互作用を明らかにする。