2019 年 30 巻 2 号 p. 51-58
トンネル切羽前方の重金属濃度を予測する手法の開発を目的として,四万十層群中で掘削された山岳トンネルをケーススタディに選び,ヒ素溶出量に着目した.ヒ素溶出量データには明瞭な空間的相関性が存在し,そのセミバリオグラムは球モデルによく適合し,普通クリギング(OK)でも対象区間全体のヒ素溶出量分布の特徴を明らかにできた.切羽前方予測を模擬した解析でも,前方3 m以内であればOKの予測精度は比較的高いが,濃度の急変部は予測できなかった.これは逐次ガウスシミュレーション(SGS)を用い,OKでの平滑化効果を軽減しても同様の結果であった.この前方予測精度を向上させるために,先進ボーリングによる正規化削孔速度比を補助情報として用いることが有効である可能性を見出した.また,SEM-EDSによる頁岩と砂岩試料の観察結果,ヒ素溶出量が砂岩よりも概ね大きい頁岩中で,黄鉄鉱は小さな球形の集合体であるフランボイダルパイライトの組織を示した.黄鉄鉱の含有量と組織も前方予測精度を向上させ得る地質要素であることを明らかにできた.