抄録
南シナ海北部の大陸海洋遷移域に見られる地磁気・重力異常の変化および地殻構造から, 海洋性拡大前のリフティングと大陸の引き延ばし過程について, 考察を行った.遷移域における地磁気異常および重力異常は, 陸側から海側にかけてシャープな正一負異常が観測される.その地殻下部には, 7.0-8.0km/sといった地震波速度の速い層の存在が確認された.磁気異常の解析から, 北緯18°付近に, 海洋性地殻を主たる磁性体とする北限があり, 磁気異常11と同定されたことより, 南シナ海は, 漸新世後期 (32Ma) に南北方向に拡大を開始したと考えられる.現在得られるすべてのデータのコンパイルには, 最近開発したフロンティアデータベースシステムを活用した.一海域の特徴を総合して判断するためには, 精度の揃ったデータの一元化が必要であり, 多角的な解析を行うことにより発達史の議論が可能となる.